2020年05月07日

漫画のセリフ

私は漫画が好きで、趣味で描いている者でもありますが、
他の人(特にオタクとかでない一般の人)と漫画の話をする機会などあると、
たまにこういった質問(↓)を受けることがあります。

 「(商業誌の)漫画のセリフの字体ってなんか独特だけど、あれってなんて書体?

gochiusa_serifu.JPG urarameiro_serifu.jpg
(↑)漫画のセリフの字って、普通そうでいて(?)ちょっと独特ですよね。
  (ここでの漫画作品のチョイスは特に意味はないので、
   とりあえずセリフの字だけ注目してみてください(苦笑)。)

漫画のセリフの書体・・・
知っている方はすでによくご存じかと思いますけど
これって確かに一般的にはあまり知られていないかもしれません。

商業漫画で、漫画の登場人物がしゃべっている
吹き出しの中のセリフによく使用されている書体は
俗に「アンチゴチ」とか「コミック体」などと呼ばれているものなんですが、
これは正確にいうと、2つの書体の混植(複合)形式でして
ひらがなとカタカナ、記号にやや太めの明朝体である「アンチック体」、
漢字と英数字に「ゴシック体」を組み合わせて使用しているものなんですね。

この書体が漫画のセリフに用いられるようになった理由と言うのは、
実は諸説があり定かではありません。
一説には、『週刊少年マガジン』(1959年創刊)など
昭和30年代半ば以降に創刊した週刊少年誌が最初にこれを導入したらしく、
当時主流だった活版印刷では何度も刷っているうちに
細い文字が読みにくくなってしまうため、なるべく太めの書体を選び、
ひらがなには全体的に太みのある明朝体(アンチック体)を、
漢字にはゴシック体を採用したのがその始まりだったと言われています。

IMG_0162.JPG IMG_0160.JPG
(↑)今はクリップスタジオなどの漫画作成ソフトでも「アンチゴチ」を使えるので、
  私も最近はこれを使っています。

ただ、もちろん
この書体が主流になっているとはいえ、
商業漫画なら必ずこれを使わなければならないというわけでもありません。
特に商業誌も、原稿の作成から編集、印刷工程までデジタル化が進んだ現在は
漫画のセリフにも結構さまざまな書体が使われるようになっています。

kimetsu_serifu.2.jpeg souma_serifu.jpg
(↑)アクションシーンや見せ場の決めゼリフなどは
  その作品の世界観や雰囲気、キャラクターに合わせて
  いろいろな字体でしゃべっていますし・・・。

sangokushi_serifu.jpg
(↑)もともとアンチック体をデフォにしていない
  出版社や作品も昔からあります。



さらにもう一つ、
こんな疑問(↓)も投げかけられることがあります。

 「漫画のセリフって句読点を入れる? 入れない?


これについては、多くの漫画を見てみれば分かるかと思いますが、
一般的には「句読点を入れない」のが主流です(↓)。

kimetsu_serifu.jpg shinmaishimai_serifu.png

・・・が、
これも実のところ、統一した基準などがあるわけではありません。

大手出版社を見れば、小学館の漫画だけは句読点が原則入れられています(↓)。

takagisan_serifu.jpg

takagisan_serifu2.jpg

dagashikashi_serifu.jpg

小学館がセリフに句読点を入れているのは
小学館という出版社がその名の通り、もともとは小学生向けの教育図書出版を
主たる業務としていたことに由来すると言われています。
国語教育として、文章に句読点をつけることを子どもたちに教えている以上
漫画の人物のセリフとはいえ、日本語の文として記載するものならば
やはり句読点はつけるべき、というポリシーがあるようで
創業以来の教育出版社としてのスタンスがそうさせているみたいなんですね。


日頃なにげに読んでいる漫画のセリフの表現の仕方一つにも
いろいろ背景があるんですね。
posted by 松風あおば at 22:39 | 日記