2020年05月15日

アマビエ

最近、ネット上でよく話題に上がっている「アマビエ」
・・・って、みなさんはご存知でしょうか?

アマビエ(正しくは「アマビヱ」)というのは、
江戸時代末期に肥後国(熊本県)に現れたと伝えられている
海の妖怪のことで、当時の瓦版にてこう伝えられています(↓)。

amabie_kawaraban.JPG

  肥後国海中江毎夜光物出ル。所之役人行見るに、づの如く者現ス。
  私ハ海中二住、アマビヱト申者也。當年より六ヶ年之間、諸国豊作也。
  併、病流行、早々私を写シ人々二見せ候得と申て、海中へ入けり。
  右ハ写シ役人より江戸江申来ル写也。
  弘化三年四月中旬

  (原文ママ)

     肥後の国(熊本)の海中に毎夜光る物が出没するようになった。
     現地の役人が行ってみると、図のような者が姿を現した。
     「私は海中に住むアマビエという者である。当年より6年間は諸国で豊作が続く。
     しかし同時に疫病も流行する。早々に私の姿を描き写して人々に見せなさい。」
     と言って海中へ入っていったという。
     この図はそのアマビエを写したもので、役人より江戸に報告されたものである。
     弘化3年4月中旬(1846年5月上旬)

なんと
海の中から妖怪が現れ、
それがその後6年間の豊作と疫病の流行を予言した上で
「自分の姿を描き写した絵を人々に見せなさい。」と言った
というんですね。

妖怪が現れて豊作や凶作、病気の流行などを予言したという伝説は
江戸時代の文献にたびたび登場します。
「人間の顔をした子牛が生まれ、人の言葉で予言を残して
すぐに死んでしまうが、その予言は必ず当たる」という
「件(くだん)」などが有名ですが、
海の妖怪でも「海彦(アマビコ)」伝説や「神社姫」伝説など
やはり人々に吉凶の予言を伝える妖怪の話が各地に残っており、
「アマビエ」のエピソードも当時の妖怪伝説としては
さほど真新しいものではなかったかもしれません。

しかし、世は今まさに
疫病の流行(新型コロナウイルス感染拡大)の真っ最中。
江戸時代末期に現れたという、その海の妖怪が発したメッセージは
現在の私たちの最も切実な願いと重なってしまったためか、
ここ2か月あまり、ネット上ではコロナ終息への願いと共に、
この「アマビエ」のことが話題として頻繁に上がるようになり
そのイラストなどをアップする人が続出しているんですね。

もっともアマビエ自身は
「早々に私の姿を写して人々に見せなさい。」とは告げているものの、
「描き写して人々に見せたらどうなるのか?」という
ご利益や効果についてまでは言及していません。
しかし、あえて疫病流行の予言を伝えつつ
続けてこれを言っていることから、
おそらく「疫病退散」のご利益があるのだろう、ということで
とある「妖怪掛け軸」の専門店が
「疫病退散にご利益があるというアマビエの力を借りよう」
「コロナウィルス対策としてアマビエのイラストをみんなで描こう」と
アマビエの解説とそのイラストを添えてツイッターで呼びかけたところ、
瞬く間に拡散し、賛同者が急増したのをきっかけに
アマビエは一躍「時の妖怪」となってしまったそうなんです。

では、そのアマビエの姿とはどんなものなのか?
その江戸時代の情報によれば
「長い髪にくちばし、鱗を持ち、3本足をした半人半魚の妖怪」とのことで
さぞ、おどろおどろしい姿なのかと思いきや、
その江戸時代の実際の瓦版に描かれたその姿をよく見てみると・・・

amabie.JPG
(↑)・・・なんというか、小学生が描いたオリジナルポケモン(?)という感じで
  なかなか愛嬌があって、あまり妖怪という感じではありません(笑)。

コロナ終息への願いとともに、この親しみやすいビジュアルも
アマビエが急に受け入れられ始めた理由なのかもしれませんが、
今ネットで「アマビエ」の単語とともに画像検索すると、
本当に多くの人がアマビエのイラストをアップしていて
さらにプロの漫画家やイラストレーターによるアマビエ作品も続々発表されており
アマビエブームはさらに楽しくヒートアップしつつあるようです(↓)。

mizuki_pro.2JPG.JPG mizuki_pro.JPG
(↑)妖怪と言えば、水木しげる。  
  その水木プロダクションは故・水木しげる先生直筆の
  アマビエイラスト(原画+着色絵)を発表しています。
  なにか神々しいですね。

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(↑)トキワセイイチ先生の漫画『アマビエが来る』。
  読んでいて思わず吹き出してしまいます。
  実際アマビエに遭遇したらやっぱこうなりますよね(笑)。

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minamoto_hisaya.2JPG.JPG
(↑)源久也先生の漫画。
  アマビエの正体は実はワカメを被ったペンギン(?)。
  でも拡散はツイッターでもいいとのことで、世俗に詳しいアマビエでした。


また、今やアマビエは
コロナウイルスの拡散防止や感染予防を呼びかけるキャラとしても活躍しています(↓)。

kouroushou.JPG
(↑)厚生労働省のコロナウイルス感染症拡大阻止を呼び掛けるアイコン。
  アマビエはなんと省庁にも抜擢されていました。

konatu_twitter.jpg
(↑)動物イラストレーターのこなつ先生の『あまびえさんの感染症対策』。
  『鳥獣戯画』のうさぎや蛙たちとともにコロナ対策をするアマビエが実に愛嬌あって、
  見ているだけでほっこりしてしまいます(笑)。


というわけで、
今や漫画やイラストの秀作がどんどん増えるのも楽しいアマビエ・・・(笑)。
一つの妖怪伝説をネタに描き手も読み手も大勢の人が楽しんでいて
今のコロナで閉塞した重苦しい空気を忘れさせてくれるものがありますが、
そう思うと・・・
「疫病が流行りだしたら、自分のキャラ絵を広く拡散しなさい。」と言った
肥後の海のアマビエの狙いは
実はこういうことだったんじゃないか? とも思えてきますね。


時代を越えて人々にご利益(?)をもたらしてくれたアマビエに感謝するとともに
改めて一日も早いコロナの終息を願うばかりです。
posted by 松風あおば at 23:12 | 日記