2018年04月29日

春の北鎌倉(1)〜円覚寺〜

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世はすでにゴールデンウィークに突入していますが、
今年も新緑が美しい気持ちのいい季節を迎えていますね。
例年なら今頃はGW後半の同人イベントの準備にあくせくしている時期なんですが
今年はとある事情で(汗)サークル参加はお休み・・・ということになったため、
私・松風もいつも以上にゆったりとした春を過ごしていまして
先日はこの春の爽やかな陽気を満喫しようと
ぶらっと日帰り旅などをしてきました。

行き先は、神奈川の歴史的観光地としておなじみの古都・鎌倉。
横浜市の北部にある私の自宅からは1時間程度で手軽に行ける
身近な観光地であるにもかかわらず、最近は訪れる機会がほとんどなく
私自身しばらくごぶさたしていた場所だったんですが、
実は先月にふと目にした雑誌の「鎌倉特集」記事に触発されて、
久しぶりに行きたくなってたんですね。

ただ、「鎌倉」とひと言で言っても
そのエリアは結構広く、史跡などを中心としたいわゆる観光エリアに絞ってみても、
その全てを一日で回るのはほぼ不可能・・・というのは言うまでもありません。
ですので、今回は久しぶりの鎌倉でのんびり春を満喫したいということもあり
鎌倉の数ある観光エリアの中でも、
緑豊かで静かな北鎌倉周辺の古寺に絞って散策してみることにしました。


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(↑)4月も下旬に入ったある日、まず降り立ったのはJR横須賀線の北鎌倉駅。
  主要ターミナル大船駅と鎌倉駅の間にある駅ながら
  通勤通学時間帯以外は乗降客もまばらでとても静かな駅です。
  この日は午前中小雨がぱらついていて絶好の行楽日和とまでは言えなかったものの、
  とりわけ寒くも暑くもなく、歩いて散策するにはちょうどいい気候でした。

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(↑)北鎌倉駅下りホームの鎌倉寄りにある「東口」。
  これから行くスポットへはこちら側の出口が便利なんですが
  この駅の正規の改札口は構内踏切を渡って上りホーム側にある「西口」で
  こちらは簡易Suica改札機のみが設置されています。
  乗車する場合でSuicaなどを持っていないときはこの東口は利用できず、
  鎌倉寄りの踏切を渡り反対側(西口)改札口の切符売り場まで行かなければなりません。

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(↑)せっかくなので、北鎌倉駅の駅舎(西口)も見ておこうと思います。
  駅にほど近い「円覚寺」の正面の「円覚寺第一踏切」
  (駅からは50mほど離れています)を渡ると・・・

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(↑)左右に「白鷺池(びゃくろち)」という池のある庭園が広がっています。
  実はここも円覚寺の寺域(前庭)なんですね。
  明治時代、軍港横須賀に通じる鉄道(現・JR横須賀線)の建設にあたって、
  無理やり円覚寺境内に線路を敷設したため、中途半端に取り残されてしまった部分なんだとか。
  
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(↑)その庭園と線路の間の細い路地を進むと、
  北鎌倉駅の駅舎のある本来の改札口(西口)に出ます。
  駅前にはちょっとおしゃれな飲食店なども数軒ありますが、駅周辺はとても静かです。

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(↑)さて先ほどの踏切に戻り、改めて北鎌倉最初の探訪スポット・円覚寺を目指します。
  線路を挟んだ踏切の向こうにその円覚寺の「総門」そして「山門」へと続く階段が伸びています。

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(↑)その階段を上って・・・まずは総門をくぐります。
  額に刻まれた「瑞鹿山(ずいろくさん)」の山号が威厳を放っていました。

円覚寺(えんがくじ)・・・
鎌倉時代の弘安5年(1282年)に鎌倉幕府の8代執権・北条時宗が
中国(南宋)の高僧・無学祖元(むがくそげん)を招いて創建した寺院です。
正式には「瑞鹿山 円覚興聖禅寺(ずいろくさんえんがくこうしょうぜんじ)」と号する
臨済宗円覚寺派の大本山で、鎌倉五山第二位とされる名刹として
歴史の教科書などにも出てくるお寺なので、ご存知の方は多いかと思います。
国宝の「舎利殿(しゃりでん)」が特に有名なんですが、
他にも国の重要文化財や史跡に指定された数々の文化財を有し、
また庭園や塔頭寺院などを含めた境内全体も
歴史ある禅宗寺院としての威厳と風格を今に伝えています。

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(↑)総門をくぐると(受付があってそこで300円の入山券を購入してその先の境内に入りますが)
  さらに伸びる階段の上に立派な門が聳え立っているのが見えます。これが「山門」です。

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(↑)山門は「三門」とも書きますが、これは
  もろもろの煩悩を取り払う「三解脱門(さんげだつもん)」
  (「空」「無相」「無願」)という意味も込められているんですね。
  日頃煩悩だらけの私の心もここをくぐれば一気にクリーンに
  ・・・なるかどうかはわかりませんが(苦笑)、
  その凛とした佇まいを見ているだけで心が洗われるような気がしてきます。
  今の山門は江戸時代の天明5年(1785年)に建立されたもので
  「円覚興聖禅寺」の額字は伏見上皇の勅筆とのこと。
  
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(↑)その先には、このお寺の本尊の「宝冠釈迦如来像(ほうかんしゃかにょらいぞう)」を
  祀る「仏殿」があります。過去の仏殿は火災や地震で失われ、
  今の仏殿は昭和39年(1964年)に再建されたコンクリート造のものですが、
  昔から伝わる仏殿指図(さしず、設計図)に基づいて古来のままの姿に建てられているとのこと。
  内部の天井画の「白龍図」なども見事でした。

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(↑)ここは「選佛場(せんぶつじょう)」。
  元禄12年(1699年)建立という茅葺き屋根のシンプルな建物ですが、
  修行僧専用の坐禅道場だそうです。禅寺ですので坐禅は日常の修行なんでしょうね。

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(↑)選佛場の内部です。南北朝時代の薬師如来立像が中央に安置されていて
  その左右に坐禅を組む畳敷きがあります。
  坐禅の持つ意味や目的の解釈は宗派によって異なりますが、
  臨済宗の坐禅は、自己に対する疑問によって自心を深め「悟り」を求めていくもの、
  要は「自分自身と向き合う修行」なんですね。
  
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(↑)選佛場の隣にある「居士林(こじりん)」。こちらは居士(在家の人)専用の坐禅道場です。

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(↑)かつては山岡鉄舟、夏目漱石といった著名人もここの坐禅に参加していたとか。
  今も土日や季節の折々に坐禅会が開かれているようです。

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(↑)丘陵地が浸食された谷戸全体に伽藍が広がっていて、境内はさらに奥へと続きます。
  小雨の降る中にあっても清く凛と引き締まった禅寺の雰囲気は
  歩いていてなんとも清々しい心地よさを感じました。

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(↑)「法堂(はっとう)」の跡。住持(住職)が説法をする重要な場だったそうですが、
  大火による焼失後は再建されることなく今に至っているとのこと。
  火災などで失われた建物は必ずしも再建されるわけではないみたいですね。

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(↑)立派な唐門と塀に囲まれた「方丈(ほうじょう)」。
  ここはその庭園と合わせて内部見学できるようになっていますので早速中に入ってみます。

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(↑)方丈の前庭です。市の天然記念物にも指定されている樹齢700年の
  ビャクシンの古木はこの寺の開祖・無学祖元の手植えと伝えられています。

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(↑)方丈の建物です(現在のものは昭和4年(1929年)築造、平成10年(1998年)改修)。
  「方丈」とは元来は寺の住持の住む建物を指しますが、
  現在は各種儀式や行事(写経会やコンサートなど)に使用される
  多目的ホールのような場となっています。時代は変わったんですね。
  建物の中にも入ってみましょう。

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(↑)入口の近くには、円覚寺を映像で紹介するコーナーや座禅の心得を教えるコーナーがありました。
   「自分のおろかさ いたらなさ つたなさに気付く
    そして はじめて 人の弱さ 痛みに気が付き 慈悲の心に通じていく」
  ・・・私も肝に銘じておきたいと思います。

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(↑)奥の部屋(書院)は写経会場になっていました(写真左)。
  トイレのことを「東司(とうす)」と言うんですね(写真右)。
  
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(↑)今は多目的ホールの方丈・・・とはいえ、やはりここはお寺の施設。
  その中心は仏間で、仏像が安置され、仏様の涅槃図、五百羅漢図などの仏教画も飾られていました。

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(↑)回廊を伝って裏手に回ると、国の史跡・名勝にも指定されている
  心字池(「心」の字を形どった池)を中心に築かれた方丈庭園を望めます。

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(↑)南北朝時代の建武年間(1334〜1336年)に
  夢窓疎石(むそうそせき)によって作庭されたものと伝えられている方丈庭園。
  方丈の回廊の縁側に腰かけてしばし眺めていると、何とも心が落ち着きますね。
  自然の景観を活かしつつ、石組などによって境地を重んじる禅の本質を表現しようとした庭園は、
  今を生きる私たちにも何か大切なものを訴えかけているような気がしてきます。

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(↑)さて、方丈を見学した後は境内をさらに奥に進みます。
  谷戸の奥まった一体には円覚寺の塔頭寺院(たっちゅうじいん:
  歴代住持の墓塔などを守るために作られた付属寺院)がいくつもあります。
  方丈庭園と一体となる「妙香池(みょうこうち)」を横目に参道を進むと
  国宝の「舎利殿」を示す矢印が見えてきました。

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(↑)「舎利殿」とは「仏舎利(お釈迦様の遺骨や歯)」を納めたお堂のことで
  開祖・無学祖元の墓塔を守る塔頭「正続院(しょうぞくいん)」の境内にそれはあります。
  鎌倉幕府3代将軍・源実朝が南宋から請来した仏舎利を安置した厨子があるという舎利殿は、
  元々は太平寺という尼寺(廃寺)の仏殿だったものを
  天正元年(1573年)に移築したものだそうですが、
  15世紀(室町時代中期)築造と推定される唐様(禅宗様)建築物として
  国宝に指定されています。

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(↑)歴史の教科書にも登場する国宝・円覚寺舎利殿。
  もっと近くでじっくり眺めてみたいところなんですが・・・残念ながらここは非公開。
  毎年正月三が日と11月3日前後に外観のみ公開されるそうですが、
  とりあえずカメラのズームを効かせて見える範囲で写真に収めておきました。

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(↑)お寺の中のお寺、塔頭寺院は他にもあります。ここは「如意庵(にょいあん)」。

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(↑)谷戸の最奥部にある「黄梅院(おうばいいん)」。
  北条時宗の夫人の覚山尼(かくざんに)が時宗の菩提を弔うために建立した
  「華厳院」が前身という夢窓疎石の塔所で
  室町幕府2代将軍・足利義詮の遺骨が分納された足利氏の菩提所でもありますが、
  ここが円覚寺境内の一番奥にあたります。総門からここまでは結構歩きましたね(汗)。

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(↑)緑に包まれ静かな佇まいの黄梅院。
  その奥にある山は、今はハイキングコースにもなっている「六国見山(ろっこくけんざん)」。
  その昔、安房、上総、下総、武蔵、相模、伊豆の六つの国を一望できたことから
  そう名付けられたと言われています。

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(↑)黄梅院から少し下った所にある「白鹿洞(びゃくろくどう)」という洞穴。
  円覚寺の創建開堂の際、無学祖元の法話を聞くために山中から
  白鹿の群れが集まったという伝説があるんですが、
  その白鹿が出てきたというのがこの白鹿洞と言われています。
  「瑞鹿山」という山号もこの伝説に由来するものなんだとか。

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(↑)ここから白い鹿の大群が現れたとか・・・想像すると凄い光景ですね。
  それ以前に、鹿が坊さんの話を訊きに集まるのか??
  ・・・というツッコミを入れる人もいないとは思いますけど(笑)。
  
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(↑)白鹿洞の正面向かい、舎利殿のある正続院の隣は「佛日庵(ぶつにちあん)」。
  ここは円覚寺の開基・北条時宗を祀る塔頭寺院で、境内には
  地蔵菩薩を本尊とする本堂のほか、時宗とその子・北条貞時(9代執権)、
  孫の北条高時(14代執権)の三代の木像を安置する廟所「開基廟」があります。

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(↑)ここは別途拝観料100円で見学可能。なんと境内は「WiFiフリー」!? さらに
  500円でお抹茶(落雁付)までいただけるというサービス満載の塔頭です。
  というわけで、私もここで一休みすることにしました。

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(↑)人もまばらなお寺の境内。
  美しい新緑の木々に囲まれ、小鳥のさえずりを聞きながら
  ホッと一息お抹茶をすする・・・なんとも至福な時間がそこにはありました(笑)。

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(↑)お抹茶をいただいた後は境内を改めてゆっくり見てみます。
  北条時宗・貞時・高時の三代を祀る開基廟。『新編相模国風土記稿』によると、
  廟の下には3人の遺骨を納めた石櫃があると伝えられ、
  時宗の夫人・覚山尼の遺骨も納められているとか。

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(↑)川端康成の小説『千羽鶴』の舞台になったという茶室「烟足軒(えんそくけん)」。
  素朴ながら気品あふれる雰囲気の茶室です。。

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(↑)さらに龍のような梅の木・臥龍梅(がりゅうばい)、
  中国の文人・魯迅から贈られたハクモクレンに泰山木(たいさんぼく)、
  大佛次郎夫人から贈られた枝垂れ桜、
  林家木久蔵作の苔庭など、著名人ゆかりの植物も楽しめます。

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(↑)さて、佛日庵を出た後は、境内を下って入口(総門)へと戻りますが
  その頃には雨も上がり、薄日が差し始めていました。
  雨に濡れた新緑がより一層輝きを増し、春の躍動感を感じさせます。

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(↑)山門近くの塔頭「松嶺院(しょうれいいん)」。
  ここは原則非公開で、春と秋の花の季節のみ一般公開されるそうですが
  この時期は牡丹やシャガの花などが見頃を迎えていて、その門は開放されていました。
  入口にお寺の人はおらず、拝観料100円はお賽銭箱(?)に入れるようになっています。
  
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(↑)牡丹の見頃は4月下旬から5月上旬。
  まさに今が旬とばかりに美しく咲き乱れていました。
  人のいない静かな境内でたった一人、咲き誇る花を存分に愛でていられる時間もなんとも至福です。
  文豪・有島武郎はここに逗留して『或る女』などを書いていたそうなんですが
  なるほど・・・創作活動に耽るにもいいところかもしれませんね(笑)。

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(↑)松嶺院の境内の、少し高台へ上った場所には墓地があります。
  ここには作家の開高健、俳優の佐田啓二、女優の田中絹代など往年の著名人のお墓もあります。
  
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(↑)墓地へと上る途中には芝桜も満開の花を咲かせていました。
  やはり花に彩られた春のお寺は美しいですね。

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(↑)松嶺院の墓地へ向かう通路からは
  円覚寺の山門・仏殿・選佛堂などの伽藍の建物が一望に見下ろせます。
  緑なす山懐に抱かれた歴史ある禅寺の風景・・・
  その厳粛な空気の中には不思議と心を和ませる温かいものもありました。

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(↑)さて、境内を一通り歩いて、総門そして階段下の入口まで戻ってきました。
  一つのお寺といってもこれだけ広いと一通り見て回るだけで結構な時間と体力を要しますね(汗)。

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円覚寺を堪能した後は、あじさい寺として知られる「明月院」に向かいますが・・・
長くなりましたので、この続きはまた今度にしたいと思います。
posted by 松風あおば at 23:49| 日記