2014年11月14日

秋田内陸縦貫鉄道の旅

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11月も半ばに入り、秋も深まってまいりましたね。
日本各地は紅葉シーズン真っ盛りということで、TVのニュースなどでも
各地の紅葉情報などが流れている今日この頃ですが、
私・松風は先月の下旬、ちょっとばかり東北方面を旅したりしておりました。

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秋田新幹線E6系「こまち」に揺られること3時間・・・降り立ったのは
秋田県は南部、みちのくの小京都・角館(かくのだて)。
三方が山々に囲まれた仙北平野に位置する、歴史ある武家屋敷と桜並木などで知られる観光地ですが、
今回の旅の最初のお目当ては、この角館から秋田県の内陸部を北へと走る
第三セクターのローカル鉄道、秋田内陸縦貫鉄道・秋田内陸線。
その名の通り、この角館から秋田県の内陸の山間部を貫いて、
秋田県北部は北秋田市の鷹巣(たかのす)までを結ぶ総延長94.2kmの鉄道路線で、
この沿線の紅葉がそろそろ見頃という話を聞き、ついふらっと旅に出てしまった・・・というところです。

冬は雪に閉ざされる厳しい気候ながら、春は桜、初夏は新緑、秋は黄金色の稲穂に紅葉と
沿線の風景が四季折々楽しめる観光路線として名高い秋田内陸縦貫鉄道・・・なんですが、
実はその経営は苦しく、今後の存続が危ぶまれている鉄道でもあるんですね。
もともと角館線(角館〜松葉)と阿仁合(あにあい)線(鷹巣〜比立内(ひたちない))
という2つの国鉄の路線があったのを、
1986年(昭和61年)に秋田県や地元自治体が出資した第三セクター会社が引き継ぎ、
1989年(平成元年)にそれぞれの終点(松葉〜比立内)を結ぶ新線を開業させて
角館〜鷹巣間を結ぶ一本の鉄道として再出発したものなんですけど、
そのかつての国鉄角館線、阿仁合線の両路線ともが国鉄末期の「特定地方交通線」・・・すなわち
バス転換が検討されるほどの赤字ローカル線だったもので、その経営は当初から厳しく険しいものだったんです。

歴史を辿ると、この鉄道、沿線に「阿仁鉱山」という江戸時代より銀や銅が豊富に採掘されてきた
日本有数の鉱山があり、その鉱石輸送のために(当初から最終的には鷹巣〜角館間を一本の路線とする計画で)
敷設された路線でして、実際に長きにわたりその鉱石輸送に大きく貢献してきたものの
1978年(昭和53年)にその鉱山が閉山して以降はその輸送も無くなり、
沿線の過疎化も進んで利用客は激減、ついには廃止が検討されるまでに至ってしまったんですね。
高度成長の波の中での産業構造の変化やそれに伴う人口の減少などにより
同じような運命に晒されて、姿を消していった地方ローカル線は各地にたくさんあります。
・・・が、ここの路線の地元は鉄道をあきらめませんでした。
あえて自分たち(自治体)で引き継いで、かつ、国鉄時代に成しえなかった両線の一体化までも進め、
地元の生活路線+観光路線として存続させるべく、その努力は今なお続いている・・・という次第なんです。

 秋田内陸縦貫鉄道(秋田美人ライン)のHP(↓)
  http://www.akita-nairiku.com/

そんな鉄道ですので、鉄ちゃんとしてはなるべく乗って応援してあげたい・・・という気持ちもあり
今回は「紅葉の見頃」を機会に角館までやってきたというのもあったんですが、
・・・あいにくこの日の天気は雨模様。
山の方を見れば霧で視界が霞み、残念ながら紅葉を愛でる行楽日和とは言えない状態でした。

とはいえ、せっかくはるばるやって来た角館・・・景色は期待できなくとも
ここはローカル鉄道の乗り鉄旅を大いに楽しもうとばかりに、新幹線「こまち」を降り、
JR角館駅の改札を出て、すぐ隣の秋田内陸縦貫鉄道の駅舎に向かいます。

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乗る列車は12時02分角館発の急行「もりよし」号・・・秋田内陸線に1日1往復半だけ走る急行列車です。
切符売り場で1日乗車券を買い、改札が始まると同時にホームに直行・・・列車はすでに停車していました。

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(↑)秋田内陸縦貫鉄道のAN8800形気動車。
  急行「もりよし」号にはもともとAN8900形という急行仕様の専用車両があるのですが
  このところは経費削減のため定期運用から離脱しているらしく
  急行運用も普通列車用のAN-8800形に置き換えられているとか・・・。
  残念ながら、この日もそのAN8800形の2両編成での運行でした。

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(↑)発車を待つ間に車内を撮影。
  AN8800形は新潟鐵工所(現・新潟トランシス)が製造した、ローカル線向け軽快気動車(車体長18.5m)の
  グループに属する車両で、他の地方私鉄(3セク)のローカル線でも見られるポピュラーなタイプではありますが、
  座席はセミクロスシートでトイレ付き、ワンマン運転対応と、コンパクトにまとめられた車両です。
  座席の座り心地もよく、観光路線を走る車両としてはなかなかいい出来ではないでしょうか。

他にもちらほら乗客はいたものの、乗り込んで発車を待つしばらくの間の車内はガラガラ状態・・・
やっぱり経営難のローカル線なんだなぁとため息をつきながら見ていたのですが、
発車間際になって、中国人観光客と見られる団体のみなさんが大勢乗り込んできまして(汗)、
車内は突然にぎやかになりました。周りから聞こえてくる会話がおおよそ中国語なので
私の方がなにか「中国を旅している孤独な日本人」みたいな状態になっていましたが
秋田の山間のローカル線も、今や他所の国からのツアー観光客の団体さんが
いいお得意様になっているのかもしれません。

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やがて発車時刻になり、列車はゆっくりと角館駅のホームを離れます。

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列車はしばらくは周囲一面が田んぼの仙北平野の田園地帯を駆け抜けます。
今年のこの付近の米の収穫はほぼ終わっていたようで、すでに稲が刈り取られた田んぼがほとんどで
遠くに見える霧の霞む山並みと相まってちょっと寒々しい風景でしたが
古き良き日本の農村の風景という感じで旅情をかきたてられるものがあります。

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(↑)所々に稲をまだ刈り取っていない田んぼもあったのですが
  そんな田んぼの一部には「田んぼアート」なるものが作られていました。
  何種類かの違う種類の稲を組み合わせて一つの絵を構成しているという
  なかなか手の込んだ芸術なんですが、今年のテーマは「日本昔話」とのこと。
  これは「桃太郎」ですね。

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(↑)そして「鶴の恩返し」・・・なんですが、こちらは
  この時点ではだいぶ刈り取られて鶴の部分がかろうじてわかる程度でした。

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(↑)案山子(かかし)もかなり個性的です。ちょっとシュールな雰囲気をも醸し出していますので
  これならスズメも米泥棒も田んぼに近づかないかもしれません(笑)。

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(↑)急行「もりよし」の最初の停車駅は西明寺(さいみょうじ)。
  ここは「西明寺栗」という大粒の栗が穫れる秋田県有数の栗の産地として知られています。
  さらに西明寺の次の駅・八津(やつ)周辺はカタクリの大群生地として知られ
  4月下旬頃のカタクリの花見シーズンには大勢の見物客が訪れるとか。

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角館を出発して20分ほどで、列車はかつての国鉄角館線の終点・松葉に到着します。
ここは日本一深い湖・田沢湖に最も近い駅でありまして、
中国人観光客の団体のみなさんもここで一斉に降りていきました。駅前に観光バスが
数台待機しているのが見えたので、おそらくその後はバスで田沢湖方面に向かったろうと思われます。

車内の座席は一気に空きますが、この駅から乗車する人もちらほらいて
車内全体としてはさほど寂しい雰囲気にはならなかったというところでしょうか。
この先の比立内までの区間は、国鉄時代には完成しなかった秋田内陸縦貫鉄道の新線区間。
雨脚がやや強くなって来る中、列車は田園地帯を抜け、この先は山合いへと進みます。

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(↑)松葉〜比立内間は1989年(平成元年)に開業した新線区間。
  線路の線形や規格は格段に良くなりますが、山間部に入るためトンネルや鉄橋が多くなります。

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(↑)上桧木内駅では上り列車と交換。ここは無形民俗文化財の紙風船上げで有名な山里。

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(↑)山合いではまだ稲刈り前の田んぼも目立ちます。雨の中でも黄金色に輝く稲穂は美しいですね。

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(↑)戸沢駅を過ぎると、列車は連続するいくつものトンネルをくぐります。
  そのうちの一つ「十二段トンネル」は全長5,697メートル。秋田内陸縦貫鉄道最長のトンネルです。

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(↑)マタギ(狩人)の里として知られる阿仁マタギ駅に到着。
  ここは森吉山自然公園への玄関駅で、近くには熊牧場などもあります。

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(↑)さらに深山幽谷へと進む列車。トンネルの合間の鉄橋上から見える阿仁川の渓谷には
  確かに紅葉が色づいていました。

急行「もりよし」号には、女性のアテンダントさんが乗車しており
車窓の見どころに差し掛かると列車は減速し、アテンダントさんのガイド説明が入るなど
観光列車としてのサービスが充実しています。
紅葉の綺麗な渓谷の風景は、この路線の秋の風物詩ともいえるようですが
アテンダントさんによると、紅葉は日々刻々と変化しているそうで
この時期は1週間たらずの短期間でもその風景はかなり様変わりしてしまうとか。
正直言うとこの時は錦織りなす鮮やかな紅葉・・・というほどの紅葉でもなかったんですが
秋田杉の濃い緑に混じる赤や黄色の葉がむしろこの地方の樹木の植生を物語っているようで
北東北・秋田を旅しているという実感も次第にこみ上げてきました。

やがて列車は比立内駅に到着(↓)。

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ここが旧国鉄阿仁合線の終着駅で、新線区間はここで終わりです。
この先、終点・鷹巣までは旧国鉄阿仁合線から引き継いだ路線となります。

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比立内を過ぎても、しばらくは列車は紅葉の色づく阿仁川沿いの渓谷をさらに進みます。
この頃には雨も弱まってきて空が大分明るくなり、時折日差しもさすようになっていましたが、
やがて車窓に民家などの建物が多く見えるようになってきたかと思うと、
列車はこの沿線の最大の町、北秋田市阿仁地域の中心地・阿仁合に到着しました。

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(↑)秋田内陸線のほぼ中間に位置する阿仁合駅は秋田内陸縦貫鉄道の本社と車両基地がある駅。
  巨大な三角屋根のある駅舎は「東北の駅百選」にも選ばれていますが、
  ちょうど北緯40度線上にある駅としても知られています。

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(↑)もともとは鉱山の町であった阿仁合。
  駅所在地の地名(住所)は今も「秋田県北秋田市阿仁銀山」。
  近くには鉱山の歴史を伝える「伝承館」「異人館」などのスポットもあります。

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(↑)隣接する車両基地にはこの時乗っていた車両と同じAN8800形気動車が2両。
  本来のこの急行「もりよし」号用の車両だったAN8900形気動車は、この日は
  臨時列車(快速)の「森吉山麓紅葉号」の運用に充てられて出払っていたようです。

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阿仁合を過ぎると、列車は再び阿仁川に沿って北上します。
このあたりの阿仁川は鮎釣りの名所としても知られ、シーズンには鮎釣りの釣り人でにぎわうとか。
天気が良ければこの辺りの車窓右側には、この沿線の象徴的な山である標高1,454メートルの
名峰・森吉山(もりよしさん)も見えるはずなんですが、悪天候のこの日は視界が霞んでいて、
残念ながらその雄姿を拝むことはできませんでした。

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(↑)阿仁川流域をゆっくり進みます。
  車窓には豊かな自然と人の暮らしが共存する里山の風景が広がってます。

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(↑)阿仁合を出てしばらくすると、再び「田んぼアート」が現れます。ここは「かぐや姫」。

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(↑)そして「かさじそう」。ちょっと見頃は過ぎてしまった感はありますが、なかなか見事な作品です。

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(↑)奥森吉観光の玄関口、阿仁前田駅に到着。
  駅舎に日帰り温泉施設(クウィンス森吉)が併設されている「温泉駅」として知られる駅なんですね。

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(↑)阿仁前田は、古くから森吉山の良質な秋田杉の集積地として栄えた町でもあったそうで
  駅前には大きな木材の集積場らしき施設があります。
  1968年(昭和43年)まではこの駅を起点とした森林鉄道も存在していたとか。


そして、さらに阿仁川沿いを北上すること数分、
蛇行する阿仁川の川幅が少しずつ広がり始め、再び車窓に人家が多く見え始めたかと思う頃、
列車は米内沢(よないざわ)駅に到着しました(↓)。

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角館駅を出発して1時間38分。
秋田内陸縦貫鉄道の終点・鷹巣まではあと15キロメートルほど、
この急行「もりよし」号ならあと20分ほどで到着というところなんですが、
実は今回の私の秋田内陸縦貫鉄道の旅は都合によりここ(米内沢)で折り返しです。

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(↑)米内沢駅は有人駅(簡易委託駅)で、切符も販売され改札業務も行われていました。
  待合室は静まり返っていてちょっと寂しげでしたが、折り返しの列車が着くと
  地元の学生さんをはじめそこそこの人が下車していたので、
  それなりに利用者のある駅のようです。  

秋田内陸縦貫鉄道全線走破まであとわずか・・・
というところで下車するのはちょっと名残り惜しいところでもあったんですが
秋の北東北の山里を走るローカル鉄道の旅はなかなか印象に残るものとなりました。
悪天候もあり、また紅葉のピークという点からもちょっと外した感もあったので
この路線の景色を楽しむという点では、ちょっとタイミングが悪かった気もするんですが、
存続が危ぶまれる鉄道ながら、この秋田内陸縦貫鉄道が
観光路線として、そして生活路線として今なお息づいているのを確かに感じ取れたというのが、
乗り鉄としてはなによりうれしいところですね。


ローカル線に揺られ、先を急がず
移り行く車窓の風景、日本の原風景とも呼べるような風景をゆっくりと眺める時間というのも
やっぱりいいものです。
みなさんも(鉄ちゃんじゃない方も含めて)、殺伐とした日常生活や都会の雑踏に疲れたとき(?)は旅に出て
知らない山里を走るこんなローカル線に乗ってみてください。
(「赤字路線救済のため、みんな乗って」という意味だけじゃなく(汗))
きっと心洗われる情景に出会えるかと思いますよ。

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(↑)急行「もりよし」の車内販売で買った秋田内陸縦貫鉄道グッズ(チョロQと手ぬぐい)。
  「もちもち三角」というバター餅やハタハタの燻製、りんごチップスなどのお菓子・つまみも買ってたんですが
  ・・・写真を撮る前に食べてしまってました(汗)。

私も、次は季節を変えて・・・
できれば桜のシーズン(北東北なので4月の下旬くらいでしょうか)に再びこの路線に乗りに来たいですね。
その頃は春コミティアの直前というのが、またも気になるところなんですけど・・・(汗)。






ちなみに・・・

今回、私がこの秋田内陸縦貫鉄道の乗り鉄旅にやってきながら、
全線走破はせず途中駅・米内沢で降りてしまったのは、どうしてか?・・・なんですが
別に時間的な都合とかではなく、実はここでちょっと見学したいスポットがあったんですね。

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それはこの米内沢駅から徒歩15分ほどの場所にある「浜辺の歌音楽館」という小さな記念館。
秋田県の山合いの町で「浜辺の歌」とはこれいかに??・・・と思われるかもしれませんが、
ここ北秋田市米内沢は「♪あした浜辺をさまよえば・・・」っで始まる「浜辺の歌」で知られる
作曲家の成田為三(なりたためぞう)の生誕地でして、その成田為三の資料が展示されている施設があると聞いて
一度来てみたいと思っていたんです。

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(↑)「浜辺の歌音楽館」
  小さい施設ながらも、郷土が輩出した音楽家の偉大な功績を後世に伝えるべく
  興味深いいろいろな資料が工夫を凝らして展示されていました。

実をいうと私・松風自身、今現在「にじたま」で出しているいつものシリーズもの作品以外に
ちょっと読み切りものの漫画を一つ構想中でして・・・
詳細についてはここでは控えさせていただくものの、そのタイトルはズバリ・・・『浜辺の歌』。
完全なオリジナル話ながら、この歌に大いに関係する話なので
ここへはちょっとばかり調べものに来た(??)・・・というところでしょうか。
この作品は来年中のどこかでみなさんにお披露目できるかと思いますので、
『てつもえ』などと同様に、ご期待してお待ちいただけたら幸いです。
posted by 松風あおば at 22:21 | 日記