2020年01月08日

ベテルギウス

冬の星座 オリオン座.JPG
  木枯らしとだえてさゆる空より
  地上に降りしく奇(くす)しき光よ
  ものみないこえるしじまの中に
  きらめき揺れつつ星座はめぐる



冬は夜空に輝く星が最も美しい季節。
そんな冬の星座を代表するのが「オリオン座」。
夜道を歩いていて凍てつく空気の中でふと見上げた夜空に
オリオン座の三ツ星が並んでいるのを見て
冬の訪れを実感したことのある人は多いんじゃないでしょうか。

ギリシャ神話に登場する狩人・オリオンを連想した星座である「オリオン座」は
明るい星が多く、中央に3つ並ぶ三つ星のほか
オリオンの右肩に赤く輝く「ベテルギウス」、オリオンの左の腰に白く輝く「リゲル」
という2つのひときわ明るい一等星を持っていて、
特にベテルギウスは、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンとともに
「冬の大三角」を形成していることでも知られています。

オリオン座.jpg

しかし、つい先日、
このオリオン座を巡って、ちょっと気になるニュースがあったんですね。
というのは、このオリオン座を代表する一等星・ベテルギウスについてなんですが
なんでもここ最近
「ベテルギウスが過去最低レベルに暗くなってきている」
らしいんです。

ベテルギウスは、
地球からおよそ640光年離れたところにある「赤色超巨星」と呼ばれる恒星で
太陽の約20倍の質量、900倍の半径を持つという、とてつもなく巨大な星なんですが
誕生から1000万年という、星としては比較的若い年齢なのにも関わらず、
その赤い色からしてすでに星の一生の終わりに差しかかっているといわれ
間もなく「超新星爆発」を起こすと予想されています。
今現在、地球の夜空に見えているベテルギウスが640年前の姿であることを考えると、
もしかしてベテルギウスはすでに爆発しているのでは?・・・ということも考えられなくもないのですが
そもそも宇宙の星レベルの話で「間もなく」というのは数万年単位の話なので
たかだか数十年しか生きられない人間の尺度ではそのあたりは知る由もありません。

ただ、星にも寿命がありいつかは最期を迎えます。
大質量の恒星は寿命が尽きる前に一度輝きを失い、その後大爆発を起こすと言われており、
これを「超新星爆発」と呼んでいるんですね。
実際ベテルギウスが急速に明るさを失いつつあるのは数年前からすでに指摘されており
これが「超新星爆発の前兆か?」とささやかれているのも事実でして
もしかすると(?)わずかな可能性ながら
私たちが生きているうちに、私たちがいつも見上げているこの地球の夜空に
巨星・ベテルギウスの最期を見届けることがあるかもしれません。

ベテルギウスは、もともと膨張と収縮を繰り返すことにより形状や明るさが変化する
「脈動変光星」なので、ここ数年暗くなっていることが直ちに超新星爆発の前兆とは言えない、とか
そもそもその前兆であったとしても、10万年以内にそれが起こるか起こらないかの話・・・といった
あまりにも現実的な(?)天文学者の指摘ももっともなんですけど、
もしかしたらある時、ふとそれを目の当たりにするかもしれない・・・というのを心の片隅に置いて
夜空のベテルギウスを眺めるのも、ある意味夢があっていいかもしれませんね。


ちなみに、「超新星爆発」は
一つの銀河の中で40年〜50年に一度の割合で発生していると言われており
その現象の存在は古くから指摘されていましたが、
現在では高精度の天体望遠鏡により、遠い宇宙の銀河のものも観測されるようになっています。

また人類の歴史上、
地上から肉眼で超新星の爆発が見られたケースというのも実際にいくつかあったんですね。
鎌倉時代の公家であり、歌人としても知られる藤原定家が記した『明月記』には
陰陽師・安倍泰俊からの過去の天体記録報告として「客星」の記述があり、
このうちの3つは「超新星爆発」の記録であると言われています。
中でも
 「天喜二年四月中旬以後の丑の時、客星觜・参の度に出づ。東方に見(あら)わる。
 天関星に孛(はい)す。大きさ歳星の如し。」
    (天喜2年(1054年)4月中旬以降の夜中に、客星(超新星)が
    觜(オリオン座)・参(三ツ星)の上の東方に現れるようになった。
    天関星(おうし座のゼータ星)のそばで輝き、その大きさは
    歳星(木星)と同じくらいだった。 )
とあるのは、
おうし座の「かに星雲」を生んだ超新星爆発(SN 1054)についての記述と言われており、
同時期のことを記した中国の歴史書(『宋史』)やアラブの占星術師が残した文書などにも
同様の記録があることも知られています。
posted by 松風あおば at 00:47 | 日記