2020年08月27日

福知山線旧線跡(武田尾)を歩く(2)

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1980年代に、ひなびたローカル線から一躍
関西都市圏の一大幹線へと大きく変貌を遂げた
兵庫県の尼崎と京都府の福知山を結ぶJR福知山線。
単線非電化路線から複線電化路線へと進化する過程において
新たに掘られたトンネルを経由する新線に切り替わる形で
廃線となった区間(生瀬〜道場間)があり、
その旧線跡の探索をしに現在の武田尾駅までやってきた
・・・という話を前回始めていたかと思いますが、
今回はその続きの話です。

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武庫川の渓谷を跨ぐ
トンネルとトンネルに挟まれた橋梁上に造られた
現在の武田尾駅・・・
その駅前通りとなっている道路こそがかつての旧線跡であり
旧線時代の武田尾駅は現在の駅から
武庫川の下流方向へ350mほど離れた場所にあった
という話は、すでに前回もしていたかと思います。

というわけで
まずは旧・武田尾駅の跡へと向かいますが・・・
今回はちょっと遠回りして
現在の駅前道路ではなく、かつての旧線時代のメインストリートを経由して
旧駅跡まで行ってみることにしました。

どういうことか? と申しますと・・・(↓)

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略地図を見て分かるかと思うんですが
現在の駅前通りが福知山線旧線の線路だった時代は、
今の武田尾駅の駅舎側から見て川の対岸の道路が
旧・武田尾駅と数軒の温泉旅館が立ち並ぶ武田尾温泉郷とを結ぶ
メインストリートだったんですね。
旧・武田尾駅前にあったという対岸の道路へと渡る
「温泉橋」という橋は今も現役の橋として存在しているので
対岸の道路からも旧駅跡に行ける・・・ということで
今回は往時を偲んで(?)あえて対岸を経由して
旧・武田尾駅跡を目指すことにしたんです(↓)。

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(↑)というわけで、まずは旧・武田尾駅とは逆方向に向かって進みます。
  しばらくすると旧線時代の鉄道トンネルを転用したトンネルに差し掛かりますが、
  今もその先で工事をしているらしく、ダンプカーも行き来していました(汗)。

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(↑)そのかつての鉄道トンネルは途中で分岐していました。
  トンネルの途中に新たに造られた坑口を外に出ると
  武田尾温泉郷へと続く武庫川を渡る橋に出ます。

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(↑)橋を渡り、武庫川の対岸の道路へと出ました。
  ここが旧線時代、駅と温泉郷とを結ぶメインストリートだった道路
  ・・・なんですが、今なお電灯も少なく、細くてちょっと寂しい道です(汗)。
  ここがメインストリートだった旧線時代はこの辺り一帯は
  今よりもずっと秘境感漂う場所だったんでしょうね。
  
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(↑)対岸には今来た道(駅前道路)が見えます。
  福知山線の列車がここを走っている風景がかつてあったんです。

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(↑)再び、現在の福知山線の橋梁(現・武田尾駅)近くまで来ました。
  新大阪から福知山線経由で城崎温泉に向かう
  特急「こうのとり」(287系)が猛スピードで通過していきます。  
  旧線時代は特急「まつかぜ」、急行「丹波」「だいせん」などが
  走っていた福知山線ですが、複線電化とこの区間のショートカットで
  優等列車のスピードも格段にアップしたのは言うまでもありません。

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(↑)橋梁上からトンネル内にかけて
  かなり強引にホームを設置している今の武田尾駅ですが
  こうして見ると駅舎部分も渓谷の山肌を削って無理やり造った感が凄いですね(汗)。

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(↑)武田尾駅の橋梁下をくぐり下流側(旧駅側)へと出ました。
  今の福知山線は運転本数が多く、上下とも頻繁に列車がやってきますが
  単線非電化の一ローカル線に過ぎなかった旧線時代の
  この辺りの区間は1時間に1〜2本の列車が通るのみでした。

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(↑)対岸にはその旧線時代の線路跡である現・駅前道路、
  そして前方には大正時代からあるという神戸水道の送水橋が見えます。

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(↑)送水橋のさらにその先に一本の橋が見えてきました。
  旧線時代の武田尾駅前にあったという「温泉橋」という人道橋です。
  つまり、ここを渡った先が旧・武田尾駅前というわけです。

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(↑)「温泉橋」まで来ました。対岸のアーチ看板には
  「またどうぞ、お気をつけて」と書かれているのが見えます。

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(↑)その「温泉橋」を渡った先は・・・
  今は辺り一帯一面アスファルトの駐車場になっていました。
  実はこここそがかつての旧線時代の武田尾駅があった場所なんですね。
  昔の鉄道駅の遺構らしきものが少しでも残っていないか? 
  周辺を見回してみても、残念ながらそれらしきものは見当たりません。

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(↑)ただ、先ほどの橋のアーチ看板を振り返って見てみると
  そこには「歓迎 武田尾温泉」とでかでかと書かれています。
  今の武田尾駅の方が武田尾温泉郷に近いにもかかわらず
  こっちの橋のたもとに歓迎看板があることに
  ちょっと違和感を覚えるところですが・・・実はこの看板、
  かつてここが駅前だった時代からあったものだそうで
  (看板自体は、幾度となく補修されたり塗り替えられたりしているとは思いますが)
  これ自体が往時の面影といえるものなんですね。
  旧線時代、武田尾駅に降り立った温泉客はこのアーチをくぐり
  この橋を渡って武田尾温泉郷に向かっていたんです。

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(↑)今は駐車場の利用客を「歓迎」しているのかもしれませんが
  車での温泉客なら今は現・駅前道路を通って
  直接旅館まで車で行くと思いますので、
  この橋で歓迎する意味はもはやあまり無さそうです(汗)。
  とすると、やはりこの看板の存在は
  「ここが駅前だった時代の名残」という側面の方が強そうですね。

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(↑)実はこの看板も・・・
  武田尾温泉の「元湯旅館」さんの古い広告看板なんですが
  話によると、これも旧線時代の武田尾駅構内にあった看板だそうで
  当時とほぼ同じ位置で残されているんだとか。
  ぼたん鍋のメイン具材である猪キャラが温泉を楽しんでいる(?)
  なかなか面白いデザインの看板で、古き良き時代を感じます。

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(↑)バス停は、今もここが「武田尾」なんですね
  (現在の武田尾駅前のバス停は「JR武田尾」バス停)。

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(↑)旧・武田尾駅前にかつてあった商店や家なども既に姿を消し
  当時の駅前の面影はありませんが、ここが駐車場となった今は
  その周辺にまた新たな商店や住宅が建ち始めているようです。


さて、この後はいよいよ
現在ハイキングコースとして整備されている
武庫川沿いの旧線跡の遊歩道に入っていきますが・・・
また長くなってしまいましたので、この続きは次回にしたいと思います。
posted by 松風あおば at 23:55 | 日記